マーチンゲールを止める二つの壁:テーブルリミットと資金、12 万回シミュレーション
マーチンゲールの説明はきれいです。負けたら倍にする。1 回勝てば全部取り返して、 さらにベース 1 単位分の利益が出る。破産しない限り、必ず取り返せる。
問題は「破産しない限り」の中に壁が二つ隠れていることです。しかも先にぶつかるのは、 たいてい見張っていなかったほうの壁です。
壁その一:テーブル上限
いくら持ち込んでも、何回倍にできるかはテーブルが決めます。ベース $100 の場合:
| テーブル上限 | 倍率 | 打てる回数 | 最後のベット | その時点の負け | その連敗が起きる確率 | 何ハンドに 1 回 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| $1,000 | 10× | 4 | $800 | $1,500 | 6.598% | 29 |
| $2,000 | 20× | 5 | $1,600 | $3,100 | 3.344% | 59 |
| $5,000 | 50× | 6 | $3,200 | $6,300 | 1.695% | 118 |
| $10,000 | 100× | 7 | $6,400 | $12,700 | 0.859% | 234 |
| $20,000 | 200× | 8 | $12,800 | $25,500 | 0.435% | 464 |
| $50,000 | 500× | 9 | $25,600 | $51,100 | 0.221% | 917 |
| $100,000 | 1000× | 10 | $51,200 | $102,300 | 0.112% | 1,811 |
ごく普通の $100–$10,000 のテーブルがくれるのは 7 ハンドです。7 回目も負けたら 次は $12,800 ——ディーラーは受け付けません。進行はそこで切れ、$12,700 が 机上の数字ではなくなります。
0.859% は安全に見えます。しかしこれは「一度きり」の確率ではなく、 始まるすべての連敗に対してかかる確率です:
| テーブル上限 | 何連敗で破綻 | 200 ハンドで 1 回以上 | 500 ハンド | 1,000 ハンド |
|---|---|---|---|---|
| $1,000 | 4 | 99.95% | 100.00% | 100.00% |
| $5,000 | 6 | 82.34% | 98.76% | 99.99% |
| $10,000 | 7 | 57.40% | 88.54% | 98.72% |
| $50,000 | 9 | 19.12% | 41.85% | 66.44% |
| $100,000 | 10 | 10.10% | 23.89% | 42.32% |
1 シューはおよそ 65 ハンド。3 シュー回せば、標準的な台では壁に当たる確率が 五分を超えます。
壁その二:資金 —— ただし働き方が逆です
直感では資金が多いほど安全です。実際に回しました:プレイヤーに賭け、タイはプッシュ、 ベース $100、純利益 +$1,000 で撤収。各行 12 万セッション。
| 資金 | テーブル上限 | 目標達成 | 破産 | 1 回あたり平均損益 | 平均ベット総額 | 実測損失率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| $2,000 | $10,000 | 64.55% | 35.45% | −$63 | $5,059 | −1.254% |
| $5,000 | $10,000 | 81.91% | 18.09% | −$85 | $6,867 | −1.241% |
| $10,000 | $10,000 | 89.94% | 10.06% | −$106 | $8,700 | −1.220% |
| $20,000 | $10,000 | 94.60% | 5.40% | −$134 | $10,446 | −1.281% |
| $50,000 | $10,000 | 97.53% | 2.47% | −$260 | $19,924 | −1.303% |
| $20,000 | $1,000 | 92.29% | 7.71% | −$620 | $49,882 | −1.243% |
$2,000 から $50,000 へ:
- 勝って終わるセッション 64.6% → 97.5%
- 1 セッションあたり平均損益 −$63 → −$260
勝つ夜は 1.5 倍に増え、失う金額は 4 倍になりました。
矛盾ではありません。資金が買うのは「より長い連敗に耐える力」、つまり より長くプレイし、より多くの金額を場に通すことです。1 ドルあたりのコストは 動きません。長く生き残るほど通る金額が増え、払う額も増えます。
最後の行がいちばん分かりやすい例です。$20,000 の資金で上限 $1,000 の台に座ると、 達成率は 92.29% と立派ですが、ベット額が抑えられてセッションが長引き、 平均ベット総額は $49,882 まで膨らみ、平均損益は −$620。 同じ資金で $10,000 の台に座った場合の 4.6 倍です。
バンカーはさらに悪い、しかも構造的に
バンカーはコミッション後 0.95 の配当なので、単純な倍賭けでは取り返せません。 「1 回勝てば全部戻って $100 の利益」を保つには、ベットを 1 段ごとに約 2.105 倍に 伸ばす必要があります:
バンカー:$105 → $216 → $444 → $910 → $1,869 → $3,836 → $7,873 → $16,160
プレイヤー:$100 → $200 → $400 → $800 → $1,600 → $3,200 → $6,400 → $12,800
同じ $10,000 のテーブルで、プレイヤーは 7 段目が $6,400。バンカーは 7 段目で すでに $7,873、8 段目の $16,160 は上限外です。コミッションが緩衝を一段奪います。
バンカーのハウスエッジ(−1.06%)はプレイヤー(−1.24%)より確かに低く、 フラットベットならバンカーが有利です。倍賭けを始めた瞬間、0.95 という配当は 長所から構造的な欠陥に変わります。
最後まで動かなかった数字
もう一度いちばん右の列を見てください:−1.254%、−1.241%、−1.220%、−1.281%、−1.303%、−1.243%。
プレイヤーの正確なハウスエッジは −1.2351%(8 デッキ全列挙、タイはプッシュ)。 資金とリミットの 7 通り、各 12 万セッション、すべてが理論値の標準誤差 1 個以内に 収まりました。
これが話のすべてです。期待値は加法的です:
E[合計] = E[1 ベット目] + E[2 ベット目] + … + E[n ベット目]
どの項も −1.2351% × そのベット額です。ベットの組み方、倍にする条件、損切り、 罫線によるフィルター——どれも各項の金額を選んでいるだけで、符号には触れません。
マーチンゲールは勝率を上げません。損失の形を組み替えるだけです —— 「ちょくちょく小さく負ける」を「ちょくちょく小さく勝ち、たまに大きく負ける」に 変える。総額は 1 ドルも減らず、ベット総額が膨らむぶん、むしろ増えます。
自分で回してみる
この記事の数字はすべて再現できます。コードは公開しています:
- 正確な確率とハウスエッジ:github.com/baccaicom/baccarat-math —— 416 枚すべてを再帰で列挙。サンプリングではありません
- ベッティングシステム・シミュレーター —— 資金・上限・システムを変えてブラウザ上で実行
- 破産確率計算ツール —— 資金とハンド数から正確な破産確率を算出
- 期待値計算ツール —— 各ベットのハウスエッジ
方法:出目の確率は 416 枚のシューの完全列挙によるもの(バンカー 45.860% / プレイヤー 44.625% / タイ 9.516%)で、近似ではありません。表 1 と表 2 は 厳密解(連敗長のマルコフ連鎖)であり、シミュレーションではありません。 表 3 はモンテカルロで、各行 12 万セッション、シード固定、誤差はリポジトリの テストを参照してください。
続けて読む:ベッティングシステムの数学 · 本当の確率とハウスエッジ · 連勝はどれくらい起きるのか · バカラの罫線の見方
よくある質問
マーチンゲールにはいくら資金が必要ですか?
「足りる」金額は存在しません。資金を $2,000 から $50,000 に増やすと、利益で終わるセッションの割合は 64.6% から 97.5% に上がりますが、1 セッションあたりの平均損失は $63 から $260 に増えます。資金で買えるのは高い的中率と大きな損失であって、優位性ではありません。
何連敗でマーチンゲールは破綻しますか?
決めるのはあなたの覚悟ではなくテーブルです。ベース $100・上限 $10,000 の台では 6 回しか倍にできず、7 連敗目で打ち止め、その時点で $12,700 の負けです。7 連敗の確率は 0.859% ですが、200 ハンド打つ間に一度でも遭遇する確率は 57.4% です。
バンカーならマーチンゲールは有効ですか?
むしろ悪化します。バンカーの配当は 0.95 なので単純な倍賭けでは取り戻せず、ベット額は 1 段につき約 2.105 倍で伸ばす必要があります:$105 → $216 → $444 → $910 → $1,869。プレイヤーより一段早くテーブル上限に達します。
資金とリミットの組み合わせ次第でプラス期待値になりますか?
なりません。7 通りの組み合わせ × 各 12 万セッションで、実測の損失率はすべて −1.22% ~ −1.34% に収まり、プレイヤーの理論ハウスエッジ −1.2351% の周りに散らばりました。ベットの組み方が変えるのは資金が動く速さだけで、1 ドルあたりのコストは変わりません。